歯周病とは?
知らない間に進行している
“骨を溶かす”歯周病
歯周とは「歯」と「歯を支える周囲の骨や歯茎」の事をさします。歯周病とは一般に歯を支えている周囲の骨が溶けて減ってしまう病気の総称です。
歯周病には歯肉炎と歯周炎という2つの時期があり、初期には歯茎から血が出るなどの歯肉炎から始まり、次第に周囲の骨が溶けて減ってしまう歯周炎へと進行していきます。
歯周病とは、細菌感染によって起こる歯茎の炎症です。
進行してしまうと歯茎や歯を支えている骨などが溶けてしまい、歯が揺れてきてしまう病気です。
歯ブラシなどで取り切れなかった汚れが残ってしまうと、多くの細菌が停滞し、歯茎の炎症によって赤く腫れあがり、膿が出てくるなどの症状があります。そのまま放っておくと、歯を支えている骨を溶かし、歯は揺れ、最後には歯を抜かなければならなくなってしまいます。
歯周病になる原因は?
一般的な歯周病の原因は、「汚れ」です。
歯ブラシが不十分で、糖を過剰に摂取すると口の中にいる細菌は歯の表面にくっつきます。これはプラーク(歯垢)と呼ばれ、歯を支えている骨を溶かしてしまう歯周病の最大原因と言われています。また、歯周病をさらに進行させてしまう要因としては糖尿病や喫煙、歯ぎしりなどもがあげられます。
プラーク(歯垢)は食事をすればすぐについてしまいます。この汚れが同じ場所に48時間以上とどまると、唾液中のリンやカルシウムによって「歯石」とよばれる硬い汚れに変わります。これを歯ブラシで落とすことはとても困難で、歯石のザラザラした表面に、さらにプラークがくっつくことになり悪循環をよびます。
▶︎プラーク(歯垢)とは?
歯垢(プラーク)とは、食べかすが歯の表面につき、細菌繁殖したものです。虫歯や歯周病、口臭の原因となります。予防するためには、付着した歯垢をしっかりと歯ブラシ等で除去することが大切です。
歯周病の症状をチェック!
- 口臭がする
- 口の中がネバネバする
- 歯茎が赤く腫れている
- 歯茎が下がった
- 歯茎から出血や膿が出る
- 歯が浮いたような気がする
- 歯が揺れている
上記に当てはまる方は歯周病の恐れがありますので、
歯科医院で検査&治療を早期から始めましょう。
歯周病と全身疾患
歯周病と一部の体の病気には関連があります。たとえば、糖尿病と歯周病は相互関係があることがわかっています。糖尿病が悪ければ歯周病は治らず、歯周病がよくなければ糖尿病は治らないといった具合です。
また、アテロームという心臓が肥大化する病気や、妊娠中の方では早期低体重児出産のリスクが高くなることが上げられています。高齢者においては、口の中の細菌が食事の際に気管に入り込み肺炎を起こす原因にもなります。
最近では、歯周病と認知症との関連性も報告されております。
歯周病治療について
当院の歯周病治療の特徴
溜まってしまったプラークは固くなり、歯石となります。歯石はご自身での歯ブラシでは落とせず、歯科医院での専用の器具で取る必要があります。また、病院でのクリーニングはもちろんセルフケアも大事になっていきます。
正しく磨いているつもりでも苦手な部分や自分では磨きにくい部分がありますので、定期的に歯科医院に行って、正しく歯ブラシが行われているのかのチェックをおすすめしています。
当院では病院でのクリーニングはもちろん、お家でのケアにも力を入れています。病院でのクリーニングは歯石取りなど特殊な器具を使ってお口の中をしっかりときれいにしますが、その後のホームケアがしっかりしていないと一時的なもので意味がありません。
そのため、患者さんひとりひとりに合った歯磨きの仕方やお口の中に合わせた歯ブラシ、歯磨き粉等を提案させていただきます。
歯周病でない方は今後歯周病にならないように、重度の歯周病の方は治療で良い状態になったものをキープするために、治療だけでなくホームケアを充実させております。
歯周病で抜歯を
行った方が良いケース
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- 歯周ポケット(歯と歯茎の隙間)が深くなってしまっている
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- 歯を支えている骨が大きく溶けてしまっている
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- 歯の揺れが大きい
▶︎歯周ポケットとは?
歯と歯茎の間には溝があります。健康な歯茎の場合、この溝は1~2mm程度ですが、歯周病になると歯茎の腫れや骨を溶かしてしまうことによって、この溝が深くなり、歯周ポケットと言います。歯周病の検査のひとつで、歯周ポケットの深さを測定し、歯周病の状態を確認します。
歯周病の重症度を表し、深くなるほど重度となります。健康な歯茎の状態であれば3mm以内ですが、4~5mmだと初期の歯周病、6mm以上で重度の進行した歯周病と判断します。また、炎症があると検査時に歯茎からの出血が認められます。
歯を抜かずに治療する
メリット・デメリット
メリット
- 自分の歯を少しでも長く使うことができる
デメリット
- 周りの歯にも炎症が波及してしまう
- 歯を抜いた後の治療法が限定されてしまう可能性がある
歯を抜いた場合
メリット・デメリット
メリット
- 炎症が他の歯に波及しない
- 歯を抜いた後の治療法の選択肢が多い可能性がある
デメリット
- 自分の歯を失ってしまう
歯周病治療の流れ
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- 検査(レントゲンや歯周ポケット検査等)
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- 表面の歯石や汚れ取り
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- 歯ブラシ指導
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- 歯茎の状態チェック
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- メンテナンス OR 歯茎の中の深い歯石取り
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- (歯茎の中の深い歯石取りの場合) 歯茎の状態チェック
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- メンテナンス
歯周病の進行別症状
軽度の場合は、簡単なクリーニングで治すことができます。中等度以上の歯周病になると治療は複数回になりますが、通常のクリーニングに加え外科処置や再生療法などで治癒できます。しかし、重度になってくると歯を残すことが厳しくなり、抜かざる得ない場合もあります。進行度合い別に見ていきましょう。
軽度歯周病
特徴 | 歯周ポケットの深さが3mm以内、歯の揺れが1度(0.7mm~1.0mm)以内のものです。レントゲンで、歯槽骨の吸収が歯根の長さの3分の1以内に収まっているものです。 |
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見た目 | 赤色の歯茎、腫れが少しある |
痛み | 痛みはない |
日常生活の支障 | 歯ブラシ時の出血 |
治療内容 | 歯磨き指導、歯石の除去 |
中等度歯周病
特徴 | 歯周ポケットの深さが3~6mm以内、歯の揺れが1~2度(1.0mm~2.0mm)以内のもの。レントゲンで、歯槽骨の吸収が歯根の長さの3分の1から3分の2に収まっているものです。 |
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見た目 | 赤紫色の歯茎、たまに腫れが強くなる |
痛み | たまに腫れて痛みが出る |
日常生活の支障 | 歯ブラシ時に出血・膿が出る、少し歯が揺れる、口臭がする |
治療内容 | 歯磨き指導、歯石除去に加えて、歯茎より下に存在する歯石の除去、場合によっては外科的に歯石を取り除く治療を行います。 それでも改善しない場合、再生療法なども視野に入れて治療を進めていきます。 |
重度歯周病
特徴 | 歯周ポケットの深さが6mm以上、歯の揺れが2~3度(2.0mm~)以上のもの。レントゲンで、歯槽骨の吸収が歯根の長さの3分の2以上にもなっているものです。 |
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見た目 | 赤紫色の歯茎、良く腫れが強くなる、歯茎がやせて歯が長く見える |
痛み | よく歯茎が腫れて痛くなる |
日常生活の支障 | 歯ブラシ時に出血・膿が出る、歯が揺れて食べにくい、口臭がする |
治療内容 | 歯磨き指導、歯石除去(スケーリング・ルートプレーニング)、歯周外科処置も含めて総合的に治療を進めて行きます。再生療法によって歯を残すことが可能なケースもありますが、最悪の場合は抜歯に至ってしまうこともあります。 |
歯周病の治療期間は、重症度によって異なります。軽度の歯周病であれば、治療期間は短期間となります。
しかし、中等度以上の歯周病の場合には、歯茎の治りや歯ブラシの状態などを確認しながらステップを踏んで治療を進めるため、比較的長期間の治療が必要になってしまうことが多いです。また、治療後も引き続きメインテナンスが不可欠で、定期的な受診が必要です。
歯周病の予防について
歯科医院でできること
歯周病は、薬だけでは治すことができません。クリーニングやセルフケアが最も大切にとなります。
また歯周病を再発させず、健康な状態を維持していくために定期的なメンテナンスが必要です。3~6ヶ月ごとの受診をおすすめします。
自宅でできること
毎日のご自身でのホームケアがとても大切です。
歯ブラシでの歯磨きはもちろん、歯と歯の間のケアとしてデンタルフロスなどがあります。歯ブラシだけではなく補助的清掃用具でのケアも重要です。歯磨き粉も薬用成分が様々なため、ご自身に合ったものの使用をお勧めしております。
また、簡単に取り入れられるものとしては口をゆすぐだけの洗口剤です。洗口剤も種類は色々ありますので、個々に合ったものを提案させて頂きます。
歯周病になりやすい人とは
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- 歯並びが悪い
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- 過去に入れた詰め物、かぶせ物が合っていない
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- 妊娠
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- 生え方の悪い親知らず
歯肉炎について
歯茎にのみ炎症があり、歯を支える骨には影響がない歯周病になる一歩手前です。
歯肉炎の症状
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- 歯茎が赤い
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- 少し腫れている
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- 歯ブラシ時に出血する
歯周病治療でよくある質問
喫煙は歯周病の発症、進行が2~9倍高くなり、歯周病菌の数が2倍以上になると言われています。これは喫煙が免疫を下げてしまい、体の治りも悪くしてしまうことで悪影響を及ぼすことが関係していると言われています。喫煙は歯周病を進行しやすくすると言えます。
歯周病は糖尿病や誤嚥性肺炎、低体重児出産などのリスクを高めます。そのほか、動脈硬化や心臓血管疾患、メタボリックシンドローム、骨粗鬆症、関節炎、腎炎、アルツハイマー型認知症との関連があるという報告もあります。
口呼吸によって口の中が乾きやすくなります。乾燥すると、歯周病菌は粘度を持つことで歯につきやすくなります。また、唾液による自浄作用がなくなり、細菌が停滞してしまうことで歯周病に悪影響を与えてしまいます。
原因として考えられるのは歯周病の進行、ブラッシング圧が強い、歯ぎしりなどの咬み合わせの問題があげられます。下がってしまった歯茎は元に戻りません。歯茎の移植が有効ではありますが、歯茎を下げてしまう原因を除去し、今後悪化していかないようにすることが大切です。
正しく使うことが大切で、どちらの方が良いとはいえません。
単純な一平面を磨くことにおいては、電動の方が短時間で効率良く磨けますが、十分ではなく、磨きにくい場所には歯間ブラシやデンタルフロスといった補助用具が必要になります。電動歯ブラシも手動歯ブラシも沢山の種類があり、それぞれブラシの形、大きさが違っています。そのため、歯科医院で自分にあった歯ブラシや補助用具、その使用法の説明を受けることをおすすめします。
メインテナンスも大切となります。
歯周病は感染症の一種で再発のしやすい病気です。セルフケアだけではすべての汚れをきれいに維持するのはなかなか難しいことが多いです。そのため、病院での定期的な歯垢・歯石の除去が必要となります。毎日のセルフケアと定期的なメインテナンスを継続していくことが、歯周病には大切となります。
歯周病の治療法
スケーリングとは
歯の表面や根の表面の歯垢歯石をスケーラーという器具を使って除去する事です。スケーラーには手用スケーラー、超音波スケーラー、エアースケーラーがあり、それぞれ状況に応じて使い分けられます。
スケーリングの必要性
歯垢や歯石は毎日溜まっていくものであり、歯の表面に溜まった歯石は歯磨きでは除去することができません。歯石によって歯の表面がザラザラになってしまうことで汚れが溜まりやすい状態ができてしまい歯周病など歯の病気を引き起こします。
治療で期待できる効果
歯周病などのお口のトラブルを防ぎます。
歯石を除去することにより歯の表面がツルツルになり汚れや細菌がつきにくくなります。それにより口臭予防にもつながります。
▶︎歯垢歯石除去は痛いの?
歯茎の外についている歯石を取る場合、ほとんど痛みはありません。歯茎の中の歯石を取る場合は多少痛みを伴う場合もありますので、痛みがある際は麻酔をしての処置をおすすめしています。
また、歯石を取ることによって、今まで歯石で覆われていた歯の一部が出ますので、一時的に冷たいものでしみてしまうなどの症状が出ることがあります。基本的には一時的なもので、症状は徐々に改善していきます。
歯周組織再生療法
歯周組織再生療法とは
歯周病によって失われてしまった歯を支えている骨や歯茎等の組織を回復する治療法です。失われた組織を回復するために外科的にお掃除をし、きれいにした後、組織を誘導する薬剤をその中に入れ、失われた骨等の組織を再生させる治療法です。
どんな症状の時に
行う治療なのか
歯周病が進行し、歯を支えている骨等が溶けてしまった場合に行います。
治療で期待できる効果
歯周組織再生療法は失われてしまった組織を再生することにより骨だけでなく歯茎も再生されます。そのため、適切な歯ブラシがしやすくなり、汚れが溜まりにくくなるため、歯周病の進行や再発のリスクを低減できます。
治療の特徴と流れ
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- 手術部位に麻酔をします
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- 歯茎を切開し、開きます
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- 感染しているポケット周囲の組織、歯石等をきれいにお掃除します
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- 組織誘導薬剤を歯の周りに入れます
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- 縫合します
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- 傷口を特殊なパックで覆って保護することもあります
歯周外科治療(フラップ手術)
フラップ手術とは
フラップ手術とは、歯周基本治療で治りきらなかった深い歯周ポケットが残ってしまい、炎症が消えなかった場合に行う歯周外科手術です。
どんな症状の時に
行う治療なのか
歯周病の治療は、まず歯周基本治療により表面の汚れを取り、その後、深い歯周ポケットの中を手探りで歯石等を取り除きます。
しかし、深い歯周ポケットでは器具が歯石に届かなかったり、届いても正確な操作ができないため、取り除くことが困難になります。そのため、歯茎を切開しあけることにより明視野で歯石を取るフラップ手術が必要となります。
治療で期待できる効果
深い歯周ポケットの歯石も確実に取ることができます。汚れがしっかりきれいになることで、歯茎の炎症も落ち着きます。
治療の特徴と流れ
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- 手術部位に麻酔をします
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- 歯茎を切開し、開きます
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- 感染しているポケット周囲の組織、歯石等をきれいにお掃除します
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- 縫合します
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- 傷口を特殊なパックで覆って保護することもあります
骨移植
骨移植とは
歯周病によって失われてしまった骨の部分にご自身から採取した骨もしくは人工の骨を入れることにより再生、回復させる治療です。
どんな症状の時に
行う治療なのか
歯周病により、歯の周囲の骨が溶けてしまった場合に行う治療です。
治療で期待できる効果
失われた骨が増生し、歯周ポケットが改善します。
治療の特徴と流れ
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- 手術部位に麻酔をします
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- 歯茎を切開し、開きます
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- 感染しているポケット周囲の組織、歯石等をきれいにお掃除します
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- 骨が失われてしまっている部位に採取した骨もしくは人工骨を入れます
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- 縫合します
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- 傷口を特殊なパックで覆って保護することもあります
歯周組織誘導法(GTR)
歯周組織誘導法(GTR)とは
歯周病で失われてしまった部分を外科的にお掃除した後に、特殊な人工膜を挿入することで再生を誘導します。人工膜の役割は治癒の過程で再生部位に歯茎の侵入を防ぎながら、歯周組織が再生するスペースを確保することができます。
どんな症状の時に
行う治療なのか
歯周病により、歯の周囲の骨が溶けてしまった場合に行う治療です。
治療で期待できる効果
失われた骨が増生し、歯周ポケットが改善します。
治療の特徴と流れ
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- 手術部位に麻酔をします
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- 歯茎を切開し、開きます
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- 感染しているポケット周囲の組織、歯石等をきれいにお掃除します
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- 骨が失われてしまった部位を人工膜で覆います
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- 縫合します